暮らしに活かす和の知恵 ― 季節を感じる台所仕事
日本の食文化は「旬」と「季節感」に根ざしています。
台所は単なる調理の場ではなく、季節を映し出す鏡であり、暮らしと自然を結ぶ場所。
冷蔵庫や流通網が発達する以前、人々は気候に寄り添い、食材を保存し、工夫しながら食卓に四季を映してきました。
ここでは、春夏秋冬それぞれの台所仕事を紐解きながら、現代に活かせる和の知恵をご紹介します。
春 ― 冬を払い、芽吹きを味わう台所
春は「苦味を盛れ」といわれるように、芽吹きの山菜が食卓に上がります。
ふきのとう、つくし、菜の花――これらは冬に溜まった老廃物を体から排出する役割を担うと考えられてきました。
下ごしらえでは「灰汁抜き」が欠かせず、木灰や重曹を使う古来の方法は、化学的にも苦味成分を和らげる効果があります。
また春先は保存食の入れ替え時期でもあります。越冬させた大根や干し柿を使い切り、新しい季節の食材を迎える準備。漬物樽を空にして洗い清めるのも春の台所仕事のひとつでした。
台所を整えることは、心身の「芽吹き」と重なる行いなのです。
夏 ― 火と水を操り、暑さをしのぐ工夫
夏は「暑気払い」の知恵が輝く季節。
きゅうりやなす、トマトといった水分を多く含む野菜が食卓を潤し、梅干しや酢の物が食欲を呼び覚まします。
かつては氷が貴重品であったため、涼をとる方法として「葛」を用いた冷菓や、干し茄子を水で戻して煮浸しにする工夫がありました。
保存性を高める台所仕事も重要です。梅雨明けの晴天に合わせて「梅干しの土用干し」を行い、殺菌効果と保存性を高めるのは夏の風物詩。赤紫蘇を揉み込み、梅の香りを台所いっぱいに広げる作業は、代々受け継がれる夏の知恵です。
また「糠床」も夏に活気づきます。毎日のかき混ぜが乳酸発酵を助け、糠漬けは体の塩分補給と腸内環境の調整に役立ちました。
秋 ― 実りを保存し、冬支度を始める
実りの秋は、収穫物をいかに保存し、冬に備えるかが台所の大仕事でした。
栗や里芋、新米、きのこ類に加え、干し柿や干し大根といった保存食づくりが盛んに行われます。
秋刀魚や鰯などの青魚は塩漬けや干物にして旨味を凝縮させ、保存性を高めました。
また「味噌仕込み」も本来は秋の作業です。秋に仕込んだ味噌は冬の低温でゆっくりと熟成が進み、翌年の春には食べごろを迎えます。
旬の食材を干す、漬ける、仕込む――これらは単なる保存ではなく、味わいを深める行為でもありました。秋の台所仕事は、四季の中でも最も「時間の流れ」を意識する瞬間といえるでしょう。
冬 ― 温め、守る台所
寒さ厳しい冬は、保存した食材をどう活かすかが鍵となります。
大根や白菜は雪の下に保存され、甘味を増してから食卓に上がります。味噌や醤油といった発酵調味料も、冬の寒さが熟成を落ち着かせる「静かな時間」を過ごすのです。
台所では「煮込み」の知恵が光ります。根菜をふんだんに使った煮物、干物を炊き合わせた料理は、身体を芯から温め、同時に保存性も高めました。
正月を迎える準備としては「餅つき」や「黒豆・数の子の仕込み」などがあり、これは単なる食事準備を超え、年神を迎える神聖な仕事でもありました。
冬の台所仕事は、食べる人を「守る」力を持っていたのです。
現代に活かす台所の四季
冷蔵・冷凍が普及した現代では、季節の保存食づくりを必ずしも行う必要はありません。
しかし、四季の台所仕事に込められた「自然に寄り添い、素材の声を聞く知恵」は、今こそ大切にすべきもの。
季節ごとの手仕事を少し取り入れるだけで、日々の食卓に奥行きと温もりが加わります。
春は山菜を灰汁抜きし、夏は梅を干す。秋は干し野菜を仕込み、冬は味噌を寝かせる――。
その一つ一つの作業が、季節を感じ、自然と調和する時間なのです。
台所に立ちながら自然と会話する。これこそが、暮らしに活かす「和の知恵」ではないでしょうか。
女将からひとこと
お食事処やまにでも、季節の恵みを大切にした料理をお届けしています。
例えば「花かご御膳」では、旬の野菜や魚を小鉢に盛り込み、季節の移ろいを感じていただけるよう工夫しております。
台所仕事の知恵を現代に活かし、食卓から日本の四季を味わっていただけたら嬉しく思います。
どうぞ旬の味わいを楽しみに、やまにへお越しくださいませ。
お食事処やまに 店舗情報
住所:静岡県磐田市塩新田53
電話:0538-55-5031(受付時間 9:30~19:00)
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