和の所作美人:座布団の正しい使い方、知っていますか?
畳のお部屋に通されたとき、まず目に入るのが座布団。
ふわりと腰をおろすだけの道具に見えますが、実は「置き方・座り方・降り方」まできちんとした作法があります。
本記事では、初めての方でも迷わないように、座布団の基本からおもてなしの現場で役立つコツまで、ていねいに解説します。
1. 座布団は“畳の中の上座”を示す合図
和室では床の間・障子・出入口の位置によって上座と下座が決まります。
一般的に「床の間の近く・奥側」が上座、出入り口に近い側が下座です。
ゲストを迎える席では、上座から順に座布団を整えておくと、座る位置が自然と伝わります。
ポイント:最上席の座布団は、ほんの少し手前に出しておくと座りやすく親切です。
2. 表裏と向きの見分け方
座布団には「表」「裏」があります。地域や流派で言い回しが異なりますが、実務では次を覚えておけば困りません。
- 表:中央の“綴じ”がきれいに見える側。布目が整い、見た目がすっきりしています。
- 裏:縫い合わせ口やタグがくる側。基本的に見せない向き。
- 置く向き:角飾りや房がある座布団は、左手前に房が来るように置く流儀が広く用いられます(会場の決まりがある場合はそれに従いましょう)。
※迷ったら「表を上に、縫い目やタグを目立たせない」——この原則で整えれば大きな失礼はありません。
3. 「座布団に座る」までの所作
- 座布団の左横でいったん正座。いきなり座布団の上に膝をつかないのが礼儀です。
- ご挨拶は座布団の外で。初対面の方・目上の方へは、まず座布団の手前で一礼・一言挨拶。
- 「どうぞ」と勧められてから着座。膝からすべらせるように前方へ入ります。
かかとで踏む、またぐ、引きずる動作はNG。 - 座る位置は中心よりわずかに手前。深く座り込み過ぎず、背筋を自然に伸ばすと美しく見えます。
4. お辞儀・受け渡し・出入りは“座布団を降りる”
和室では、深いお辞儀やお盆・お茶の受け渡しの瞬間は、座布団から一歩降りるのが基本。
「相手や器に敬意を向けるため、自分の居心地を一度手放す」という、和の心が表れます。
立ち上がる際も、座布団の前に膝を戻してから起立。座面を蹴らない・踏まないよう静かに。
5. きれいに見える座り方のコツ
- 手の置き場:膝の少し内側。指先は揃えて軽く丸めると所作がやわらかく。
- 背筋:肩を上げず、みぞおちを引き上げる意識。
- 足:正座・割座・横座りは場により選択。正式な場は正座、長時間やカジュアルな場は無理のない姿勢で。
- 衣服:着物の場合は裾を整えてから膝を前へ。洋装でも膝を揃え、バッグは右後方に控えめに。
6. 配膳・サービス側の整え方(お店・ご自宅共通)
- 掃き・拭き→座布団→卓上の順に。座面に埃が残らないよう最後に手でさっと払います。
- 角を揃える。畳目に対して平行・直角を意識。数枚並ぶときは前端のラインをそろえると見栄えが上がります。
- 座りやすさの“余白”。卓から一拳半〜二拳(約15〜25cm)手前に置くと、出入りがスムーズ。
- 厚み違いの配慮。ご年配の方・正座が難しい方には、やや厚め・大きめを。席に段差がある場合は滑り止めを併用。
7. よくあるNGとリカバリー
- NG:座布団をまたぐ・踏む・背もたれにする・枕にする。
対応:気づいたら静かに位置を戻し、「こちらでどうぞ」と一言添える。 - NG:食器をこぼしたまま長く置く。
対応:乾いた布→固く絞った布の順で押さえ拭き。生地の向きに沿ってやさしく。 - NG:パンパン叩いて埃を舞わせる。
対応:表面を手のひらでなでる→屋外で軽く払う→必要に応じてクリーニングへ。
8. シーン別ミニマナー
会合・挨拶まわり
入室→座布団の左横で正座→名乗り・一礼→勧められてから着座。名刺交換は座布団から降りて行います。
お食い初め・法要など改まった席
開式・閉式の挨拶、焼香・献杯などの動作は必ず降りてから。写真撮影時は座面を整えて端正に。
カジュアルな宴席
目上の方が座ったのを見届けてから着座。膝を崩すときは「失礼します」と一声かけると雰囲気が和やかに。
9. 置き方の“整え”で、場の品が一段上がる
座布団は、畳という「余白」の上に浮かぶ小さなステージ。
角が揃い、表が上を向き、向きが統一されている——それだけで場の品が一段上がります。
準備係・迎える側は、「座る方の動線」まで想像して数センチ単位で調整すると、所作が自然に美しく流れます。
10. 体へのやさしさも忘れずに
- 長時間の正座が難しい方へは、膝当て・低反発タイプなどを用意。
- 季節で素材を替える(夏:い草・麻混、冬:起毛・厚手)。
- アレルギー配慮のため、こまめな天日干し・除菌スプレーを。
11. これで完璧!座布団チェックリスト
- 表裏・向きはそろっているか
- 上座から順に配置されているか
- 卓との距離に余白があるか
- 出入りの動線をふさがないか
- お辞儀・受け渡し時に「降りる」ことをスタッフ全員が共有しているか
12. まとめ:座布団は“思いやり”を形にする道具
座布団の扱いは、難しい決まりごとではなく、相手が気持ちよく座れるように整える心そのもの。
横で正座して一礼、勧められてからそっと座る、深い所作は降りて行う——。
その一つひとつが、場に静かな品格を生み、あなたの所作を「和の美しさ」へと導きます。
📍お食事処やまに 情報
お食事処やまに(静岡・磐田)
住所:静岡県磐田市塩新田53
電話:0538-55-5031(受付 9:30〜19:00)
公式HP:https://yamani-iwata.com
※法要・お祝い・ご会食など、畳の間の設えもご相談ください。席次・座布団の配置まで女将とスタッフが丁寧にお手伝いします。
💬女将からひとこと
最近はテーブル席や椅子での会食が主流ですが、いざという時に座布団の作法を知っていると、とてもスマート。
座布団は「どうぞごゆっくり」という気持ちを表す日本の美しい文化です。
やまにでも、お客様が心地よく過ごせるよう、一枚一枚に心を込めて整えています。


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