おもてなしの心に触れる食卓:相手のペースに合わせる和食の流儀
こんにちは。やまにの女将です。
お客さまをお迎えする中で、何よりも大切にしているのが「その方が心地よく過ごせる空間」をつくること。
それは、お料理の味や器選びだけではなく、一緒に食事をする人との“間合い”にも表れるものです。
今回は、和食ならではの“おもてなしの美学”──
「相手のペースに合わせる」という流儀について、お話ししてみたいと思います。
「先に食べない」って、思いやり。
とある日の昼下がり、常連のお客さまが娘さんとご来店されました。
仲の良い母娘さんがお席につき、注文されたのはやまに人気の「花かご御膳」。
運ばれてきた彩り豊かなお料理に、娘さんがふと箸を止めて、母親の方を見て一言。
「お母さんの“いただきます”がまだだったよ」
私はその一言に、思わず心が温かくなりました。
食事はただ栄養を摂るだけではなく、共に味わう“時間”を共有するもの。
先に食べ始めることで、相手に「急がせてしまう」ような空気をつくってしまうこともあります。
和食の世界では、「間(ま)」を大切にするという考え方があります。
料理の出すタイミング、会話のテンポ、そして箸を動かすリズム。
それを自然に“合わせにいく”というのが、美しい所作の一つなんですね。
ひと呼吸おいて、「どうぞ」を待つ
お祝いの席やお集まりなどでは、お膳が並ぶと自然と会話が弾みます。
でも、和食の作法では、主客(ホストとゲスト)を意識するのがとても大切とされています。
たとえば宴席では、まず主賓が箸を取るまで待つのが基本。
主賓が「いただきます」と口にし、箸を持ったタイミングで、まわりも同時に食事を始めるのが理想です。
こうした所作には、「あなたを大切に思っています」「お先にどうぞ」という
心の敬意が込められています。
「目上だから」「年長だから」という上下関係というよりも、場の流れを丁寧に整える美しさなのです。
子どもと一緒に学べる“食のリズム”
最近では、お子さまと一緒にご来店くださるご家族も多くいらっしゃいます。
その中で、ちょっとした嬉しい光景があります。
小さなお子さまが、ごはんを前にして手を合わせながら、「パパまだ~?」と待っている。
その姿を見て、お父さんが「よし、じゃあ一緒にいただきますしよう」と笑顔で答える。
そんなふうに、“食べるペース”を家族で揃えるって、とても素敵だなと思います。
もちろん、急いで食べなきゃいけない日もあるでしょう。
でも、ひとくち目の「いただきます」を、誰かの呼吸と合わせてみるだけで、食卓はふんわりとした温かさに包まれます。
“おもてなし”の正解は、相手の数だけある
和食のマナーや作法には、たくさんの“決まりごと”がありますが、
その根っこにあるのはいつも「相手を思う心」です。
「この方は今、ゆっくり味わいたい気分かしら?」
「先にひとこと声をかけたほうが、安心してもらえるかな?」
そんなふうに、ほんの少し想像するだけで、和のおもてなしはぐっと豊かになります。
さいごに──間を読む、おもてなしの稽古
やまにでは、スタッフ一人ひとりが「お客さまのペース」に寄り添うことを大切にしています。
料理を出すタイミングも、「お連れさまがトイレに行かれている間はお待ちしますね」など、
ほんの少しの配慮が、心地よいお食事時間につながると信じています。
和食の所作は難しく思われがちですが、
すべては“誰かのことを想う気持ち”から生まれたもの。
「相手のペースに合わせる」ことも、そのひとつです。
次の食卓では、ぜひその“間合い”を感じてみてくださいね☺️
ではまた…やまに女将より


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