はじめての一口に込める、家族の願いと味の記憶

やまに女将

こんにちは。
「お食事処やまに」女将の鈴木弘子です。

私は静岡県伊東市・八幡野の出身。
毎日、大室山を眺めながら育った、海と山に囲まれた自然っ子です。

実家は海の見える小さな旅館。
人をお迎えする背中を、両親から見て育ちました。
お客様が笑顔で帰っていく姿が、子ども心にとても好きでした。

その原点が、今の私の女将の仕事につながっています。

磐田に嫁ぎ、「やまに」で大将と二人三脚。
地元・福田漁港のしらすや旬の食材を使いながら、
“体にやさしく、心がほっとするごはん”を大切にしています。

最近は発酵や麹の世界にも惹かれています。
日本の知恵ってすごいなあと、日々勉強中です。
腸が喜ぶごはんは、心まで元気にしてくれると感じています。

着物でお出かけするのも好き。
旅も好き。
人とおしゃべりするのはもっと好き。

お店で見かけたら、どうぞ気軽に
「女将さん!」と声をかけてくださいね。

“また来たよ”のひとことが、私の宝物です。

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その日、厨房には特別な空気が流れていた

「今日のお食い初め膳は、男の子。おばあちゃんも一緒に来てくれるって。」

女将がそういうと、大将はにっこり。いつもよりゆっくりと包丁を握っていました。
浜松の市場から届いたばかりの新鮮な尾頭付きの鯛を、ていねいに下ごしらえしていくその手元には、どこかいつもと違うやさしさがにじんでいます。

「皮はパリッと、中はふっくらな仕上がりにするよ。人生最初の“祝い膳”だからな。」

お食い初めって、なんのためにするの?

やまにでも人気の「お食い初め膳」は、生後100日前後の赤ちゃんに「食べる真似」をさせて、
「一生食べものに困りませんように」と願いを込める、日本の大切な行事です。

実際にはまだ食べられない赤ちゃんに、ご家族がひとくちずつお箸で食べさせる真似をします。
その順番や意味は地域によって少し違いますが、

尾頭付きの鯛(めでたい)

赤飯(お祝いの色)

煮物(季節の恵み)

お吸い物(人との縁)

歯固め石(丈夫な歯になりますように)

それぞれに、日本の四季と暮らしの願いが詰まっているんです。

やまにのお食い初め膳の舞台裏

厨房の奥では、スタッフのえりちゃんが煮物の盛りつけをしていました。

「この人参のねじり梅、もうちょっと小さくしようかな。赤ちゃんの口元に寄せたとき、器も大きすぎると怖く見えちゃうから。」

えりちゃんは自身も子育て中。だからこそ、細かいところまで気を配ります。

そのころ、ホールでは、お客様のご来店時間に合わせて最終準備を。
「きっと今日が、最初の“家族で和食”の日になるんだな」と、胸の奥がぽっとあたたかくなっていました。

家族の“はじめの一口”が、記憶になる

やがてお客様がご来店。
赤ちゃんは白いお祝い着、パパもママもにこにこして、どこか緊張したような、うれしそうな表情です。

おばあちゃんが赤ちゃんを抱っこしながら、鯛に箸を運び、「はい、どうぞ〜」とやさしく声をかけました。

赤ちゃんは食べるふりをしただけなのに、
その場にいた全員が、まるでごちそうを食べたかのように、笑顔になっていました。

それを見た女将がぽつり。

「赤ちゃんは食べてなくても、ちゃんと覚えてる気がするなぁ。
この音とか、においとか、みんなの笑い声とか。」

次の世代に、和食の「時間」ごと伝えていく

和食は味だけじゃなく、空気や時間、心まで伝える料理だと思っています。

食べた人が、そのときの会話や風景、感情までまるごと覚えていてくれる。
それが和食の“やさしいちから”なのかもしれません。

「一生食べることに困らず、元気でいてね」
その願いを、私たち「やまに」も一緒にお手伝いできること。
それが、女将としてのいちばんのよろこびです。

執筆:やまに女将/やさしい和の育ち便り

この記事を書いた人
やまに女将

こんにちは。
「お食事処やまに」女将の鈴木弘子です。

私は静岡県伊東市・八幡野の出身。
毎日、大室山を眺めながら育った、海と山に囲まれた自然っ子です。

実家は海の見える小さな旅館。
人をお迎えする背中を、両親から見て育ちました。
お客様が笑顔で帰っていく姿が、子ども心にとても好きでした。

その原点が、今の私の女将の仕事につながっています。

磐田に嫁ぎ、「やまに」で大将と二人三脚。
地元・福田漁港のしらすや旬の食材を使いながら、
“体にやさしく、心がほっとするごはん”を大切にしています。

最近は発酵や麹の世界にも惹かれています。
日本の知恵ってすごいなあと、日々勉強中です。
腸が喜ぶごはんは、心まで元気にしてくれると感じています。

着物でお出かけするのも好き。
旅も好き。
人とおしゃべりするのはもっと好き。

お店で見かけたら、どうぞ気軽に
「女将さん!」と声をかけてくださいね。

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