五感で味わう和食の世界:四季を映す、もりつけの色と配置

暮らしに生かす和の知恵

五感で味わう和食の世界:四季を映す、もりつけの色と配置

和食の美しさは、味や香りだけではありません。目で見て楽しむ「盛りつけ」もまた、五感のひとつである「視覚」を通じて心に響く大切な要素です。
特に和食は、日本の四季を大切にする文化と深く結びついており、「春はやわらかく華やかに」「夏は涼しげに」「秋は実りを感じさせ」「冬は温もりを宿す」ような工夫が、ひと皿に込められています。

もりつけは「料理の設え(しつらえ)」

和食の盛りつけは、ただお皿にのせるだけではありません。
まるで茶室の床の間を飾るように、限られた空間に季節の趣や美しさを「設(しつら)える」心が表れています。器の余白を活かし、料理と空間のバランスをとること。
これにより、目にも心にも「余韻」を与えるのです。

四季の色彩を映す

  • 春:菜の花の黄色、桜の淡いピンク、山菜の緑など。やわらかく、生命の息吹を感じる色。
  • 夏:ガラスの器に涼しげな青や白。おくらやしその緑、南瓜の明るい橙など。さっぱりとした清涼感を演出。
  • 秋:きのこや銀杏の茶、栗や紅葉の赤。深まりゆく色合いと実りの彩り。
  • 冬:白い大根や白菜、黒豆や里芋の素朴な色。土ものの器で温もりを感じさせる。

季節の食材を使うだけでなく、その「色」をどう見せるかが、和食の世界ではとても重要です。

配置の工夫:右上がりと「間(ま)」の美

和食のもりつけには「右上がり」が基本とされています。これは、見る人に前向きな印象や調和を与えると言われ、縁起の良い配置とされてきました。
また、器の中に「間(ま)」=余白をつくることで、より料理の美しさが引き立ちます。この「間」は日本文化全体に通じる美意識でもありますね。

器との相性も大切に

器の色や質感も、もりつけの印象を大きく左右します。たとえば夏には涼しげなガラスや白磁を、秋冬には土ものや織部焼など温かみのある器を選ぶことで、料理全体に季節感が生まれます。
「食器は料理の着物」と言われるように、何を着せるかで料理の表情が変わるのです。

やまにのもりつけ:季節を届けるおもてなし

お食事処やまにでは、地元・静岡の旬の食材を使いながら、季節の風景を一皿一皿に映し出すようなもりつけを心がけております。
たとえば、夏の「花かご御膳」には青紅葉を添えて爽やかに、秋の「やまに膳-紬-」には南天の葉を添えて落ち着いた彩りを演出。
視覚でも季節を味わっていただけるよう、大将が一皿一皿、丁寧に盛りつけをしております。

最後に:目で味わうことは、心で味わうこと

和食は、ただ空腹を満たすだけの料理ではありません。
目で見て、季節を感じ、心がふっと和む——そんな時間こそが「いただきます」の本当の意味かもしれません。
盛りつけという芸術を通して、心まで満たされるお食事を、これからも皆さまにお届けできるよう、やまに一同精進してまいります。


📍店舗情報

お食事処やまに
静岡県磐田市塩新田53
ご予約・お問い合わせ:0538-55-5031(9:30~19:00)
公式HPはこちら

女将からのひとこと

「目でも楽しめる料理って、気分まで華やぎますよね♪
今日はどんな彩りかな?と、お客様にワクワクしていただけるような食卓を、これからもご用意してお待ちしています。
季節の移ろいを、ぜひ五感で味わいにいらしてくださいね。」

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